今、自分(お客様)が住んでいるマンションは仕事上のつきあいがあるゼネコンが
建てて、自分の会社が木工事を行った。ただ、マンションの入居者には
自分の職業を伏せて住んでいる。ときどき他の入居者から建てたゼネコンに対する
悪口が聞こえてくるが、「自分が建設にかかわった」ことを伏せているので
ただ話を聞くだけになっている。
自分が専門家だということがわかると、苦情受付係のようになってしまって
マンションに居づらくなる可能性があり、住んで5年以上になるが
今まで自分の職業を明かさずにいる。
この人のように自分の職業を明かさずにマンションに住んでいるお客様は結構多い。
確かに、マンションの入居者に対して自分が専門家だということがわかれば、
何かと助言を求められてわずらわしく感じることもあるだろう。
しかし、考えようによっては「買った人のナマの声」を聞くのに
最高のチャンスではないだろうか。
うちの会社の材料は数多くのマンションに納入されているが、マンションを買った人と
直接接することはまずない。木工事を施工するお客様も同じで、買った人の声を
直接聞くことは少ない。
私はこのお客様に、「マンションの入居者の皆さんに自分の職業を
明かしておつきあいしたらいかがですか」と言った。
確かにわずらわしいかもしれないが、同じマンションに住む人の相談を
受けることは「買った人のナマの声」を聞くことになる。
専門家として適切な助言ができれば、リフォーム工事の受注に
つながる可能性もある。
マンションの新築工事は競争が激しすぎで値段が安くなりすぎ、
手が出せないとまで言われている現在、お客様は皆改修(リフォーム)を
手がけはじめている。リフォームで一番大事なことは「営業」。
どこに仕事があるのか、見つけるのが難しい。
そこで、自分の住むマンションで専門家として相談を受けていれば、
だんだん口コミで商売が広がる可能性があるし、新築マンションの木工事にも
生かせる部分があるはずだ。
私もマンション住まいだが、真上の部屋で漏水が発生したとき、相談に乗って
いろいろ助言をしたことがある。私も漏水は初めての経験だったので驚いたが、
これも自分が材木屋だということを日頃から言っていたから来た話だった。
マンションに材料を納入する当社にとって、「買った人のナマの声」を聞くことが
とても重要だ。たとえば、塩ビについてマンション購入者がどう考えているかが
聞けるし、また、こちらの主張を直接伝えることができる。
例えば、今いろいろ騒がれている塩ビから出る環境ホルモン(可塑剤=フタル酸エステル)
の話にしても、マンションに住んでいる人たちはほとんど実感がない。
塩ビの「怖さ」を知れば、簡単に塩ビを選ばなくなるはずだが・・・。
まず、自分の周辺にある町内会、自治会、管理組合等に参加してみること。
人間、わずらわしいことから逃げたいのは誰でも同じだが、逃げているうちは
何も得られない。できれば、社員の皆さんには材木屋として
自分の職業上の相談が受けられるようになってほしい。