長年の懸案だっただけに、うちの会社に長くいる人ほど感慨深いだろう。
以前、「屋根をつくると雪が降る」と書いたが、今回、屋根が完成したら
雷雨が降ってきた。社長は「ドームになった」と言っていたが、
東京ドームのような密閉型ドームではなく、ドームの中に風が通る
開放型の西武ドームに近い形だ。うちの会社は木材の工場だから、
風を通す必要があり、開放型が合う。
これから来る梅雨、暑い夏、台風の来る秋、また強風の吹く冬に、
屋根の真価が出るだろう。作業環境が改善されることが、会社の士気を
上げることにつながるはずだ。
さて、今回のタイトルを「悪人のすすめ」としたのは、今月「光に向かって
100の花束」という本を読んだ中に、社員の皆さんにとってきっと
役に立つと感じたエピソードがあったので、今回初めて引用する。
「悪人ばかりだとケンカにならない」~一家和楽の秘訣~
ある所に、内輪ゲンカの絶えないA家と、平和そのもののB家とが隣接
していた。
ケンカの絶えないA家の主人は、隣はどうして仲よくやっているのか不
思議でたまらず、ある日、B家を訪ねて懇願した。
「ご承知のとおり、私の家はケンカが絶えず困っております。お宅はみな
さん仲よくやっておられますが、なにか秘訣でもあるのでしょうか。一家
和楽の方法があったら、どうか教えていただきたい」
「それはそれは、別にこれといった秘訣などございません。ただお宅さま
は、善人さまばかりのお集まりだからでありましょう。私の家は悪人ばか
りがそろっていますので、ケンカにはならないのです。ただそれだけのこ
とです」
てっきり皮肉られているのだと、A家の主人は激怒して、
「そんなばかな!!」と、言おうとしたとき、B家の奥で大きな音がした。
どうも皿かお茶碗でも割ったようである。
「お母さん、申し訳ありませんでした。
私が足元を確かめずにおりましたので、大事なお茶碗をこわしてしまい
ました。私が悪うございました。お許しください」
心から詫びている、お嫁さんの声がする。
「いやいや、おまえが悪かったのではありません。先ほどから始末しよう
しようと思いながら横着して、そんなところに置いた私が悪かったのです。
すまんことをいたしました」
と、続いて姑さんの声が聞こえてきた。
「なるほど、この家の人たちは、みな悪人ばかりだ。ケンカにならぬ理
由がわかった」
A家の主人は感心して帰ったという。
謗るまじ たとえ咎ある 人なりと
我が過ちは それに勝れリ
高森 顕徹著「光に向かって100の花束」1万年堂出版 より引用
現代は、何でも便利になったこともあって、自分の思い通りにならないと
すぐ不満をもつ人が増えた。なにか不満があると、すぐ口に出す人も多い。
このエピソードの中の「悪人」は、おそらく世の中では少数派だろう。
だが、少数派だからこそ、希少価値がある。「善人」が多いからこそ、
「悪人」が際立つ。社員の皆さんはどう思いますか?