先月末、東大農学部で「木材塾」が開かれ、有馬孝禮名誉教授の講義を聞きました。
有馬先生は、産業を炭素資源の立場から3つに区分しています。
ひとつは、資源を生産する(炭素を固定する)産業 すなわち、農業・林業です。
二つ目は、消費が資源を生産する産業への駆動力になる産業
(炭素を保管し、農業・林業の駆動力になる産業)。
それは、木材関連産業(当社も含む)・食品産業です。
木材を使うから林業が行われ、 皆さんが食べてくれるから食品をつくります。
三つめは、資源を確実に消費していく産業(二酸化炭素を放出する産業)です。
農業・林業・木材関連産業・食品産業以外の産業はすべて消費する産業になります。
どの樹種でも、乾燥木材の重さの半分は炭素です。大気中のCO2(二酸化炭素)が
増えることは、地上の炭素が減っていることと同じです。
石油・石炭などの化石燃料を燃やせば、地中に埋まっていた炭素が大気中に放出されます。
そのCO2(二酸化炭素)を吸収して成長するのが木材です。
木材を使うことは、炭素を貯蔵しておくだけでなく、
次に成長する木材の場所を山に空けることにも貢献します。
これが「駆動力」になる産業と呼ぶ理由です。
今の世の中はほとんどが資源を確実に消費する産業です。
資源は再生できなければいずれは必ず枯渇しますので、
持続可能ではありません。
持続可能な社会とは、低炭素社会=低二酸化炭素社会、
言い換えると、高炭素貯蔵社会こそが目指す姿です。
木材の最大の特質は炭素貯蔵ができることです。
ですから、持続可能な社会をつくるためには木材利用を
もっと推進しなければならないというのが有馬先生の主張です。
私は、自分が木材業界で働く最大の意味は
「持続可能な社会=高炭素貯蔵社会」
づくりに貢献できることだと考えています。
その裏付けにあるのが有馬先生の主張です。
15年以上前から有馬先生の主張を信じて今日に至りますが、
二酸化炭素(CO2)の濃度上昇が叫ばれる今、
その重要性はますます増しているように感じます。
しかし、木材業界が持続可能な社会づくりに持続する仕事だとしても、会社自体が
持続可能でなければ意味がありません。会社の「駆動力」を作り、社員の皆さんが
食べていける会社にするにはどうしたらよいか、それを考えるのが私の仕事です。
今まで私は自分自身が会社の「駆動力」として仕事をとってきて、
工場を回すことを自分の使命だと思って実行してきました。
それは会社の一部分においては効力を発揮しましたが、
会社全体を見るべき社長の仕事としてはふさわしくないという声が
社内、社外を問わず出ています。
あえて申し上げれば、私もその通りだと思います。
わかっていても、担当を替えることができない。
それは周囲のせいではなく、自分自身の問題に他なりません。
逃げ道を断つためにも、この場で私自身が第一事業部のお客様担当から
近々離脱することを宣言しておきます。近い将来、座る席も移動しようと考えています。
当社には、お客様から見て個々の部門として大いに魅力ある部門がたくさんありますが、
個々の「点」として動いているのが現状です。
野球の「打線」ではないですが、「点」ではなく、「線」として動けるようにできれば、
お客様から見て、より魅力ある会社になれますし、
会社全体にとって大きな「駆動力」になれます。
会社全体の「線」づくりをすることを、私の目標とします。
「線」ができれば、仕事が増えて、社員の皆さんが「持続可能な会社」だと
体感できるようになりますから。
投稿者 無垢材・造作材の木村木材工業(株) : 2010年02月26日
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