「木を見て森を見ず」ということわざがあります。意味は、物事の一部分や細部に気をとられて、全体を見失うことです。しかし、私は「木を見て森を感ず」ことが木材業界人としてあるべき姿勢ではないかと思っています。
今月、大分県の総合林業会社トライ・ウッドさまを見学する「森林体験ツアー」に参加しました。安成工務店さんが参加者を募集し、トライ・ウッドさまへ行って森林や丸太を輪掛け乾燥している土場、そして製材工場を見学し、さまざまな仕掛けの中で安成工務店,トライ・ウッドの皆さんが参加者と一緒になって楽しむ一泊二日の体験ツアーです。
森林や製材工場内にトライ・ウッドさまの理念“Pay it forward” が掲げられていました。“Pay it forward”を日本語に訳すと「恩送り」です。誰かから受けた恩を直接その人に返すのではなく、別の人に送るという意味です。
安成工務店,トライ・ウッドのみなさんは森林体験ツアーに来場したお客様のためにそれはそれは一生懸命に取り組んでいました。約20年の歴史を感じさせる工夫が随所にみられましたし、とにかくスタッフの皆さんの目が輝いていて、マンネリを感じさせません。
森林体験ツアーの収支は必ずしもよくなくても、自分たちの姿勢に共感する工務店さんのお客様にわかっていただければいい。姿勢に共感するお客様こそが本当のお客様だという気持ちが見ている私にも伝わってきました。森林体験ツアーが安成工務店さん,トライ・ウッドさんのスタッフの皆さんのベクトル(方向)合わせになっていると伺いました。
実際に丸太を製材するところを拝見したところ、しっかりと枝打ちがされていて節の小さい材料が取れました。枝打ちをしたのは数十年前だと推測されますので、当時林業に携わっていた先輩が後世のためにしていただいた仕事の尊さを感じさせる材料です。
「木を見て森を感ず」。材料の向き不向きを瞬時に判断する仕事の中で製材された角材だけを見るときでも、樹木が数十年以上をかけて森林の中で育ってきて、先輩が手をかけてきた歴史を感じる気持ちを大切にする気持ちを持って材料を使う姿勢が、木材業界人としてあるべき姿勢ではないでしょうか。
自分の都合よりも「公」の都合を大切にすると、その場では「損してしまった」と思うかもしれません。しかし、「公」の都合を大切にして行動し「恩送り」の姿勢を続けることが、結局は心の底から「これでよかった」と思える気持ちを積み重ねることにつながり、自分の気持ちを穏やかにしていきます。「恩送り」の姿勢を続けていくと、「損してしまった」ではなく、「公」のためになるならいいと思えるように、気持ちがほんの少しづつですが変わっていくように感じます。
「木を見て森を感ず」。「恩送り」をする人生。私自身の人生もそうありたいと思いますし、社員・関係者のみなさまの人生もそうあってほしいと心から願います。
投稿者 無垢材・造作材の木村木材工業(株) : 2017年07月31日
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